古いものを大切に 思いを広げて
2023.3.14長崎市大浦町に事務所を構える、有限会社明生興産。
不動産会社として物件の売買、賃貸の仲介や管理を行いながら、その知識を活用し古い建物をリノベーションし再販することにも力を入れている。工務店業も行う不動産会社だ。
リノベーション事業は、尾上雅彦氏が代表になってから、他社との差別化を図るため始めたもので、自身が古い建物が好きだったことも影響している。
明生興産が手がけるリノベーション住宅は、古い味わいのある部分を残しながら、今の生活にあった間取りや設備に変更し、若い人も住みやすい内装になっている。年月を重ねたものだからこそ味わえる落ち着く空間が魅力だ。
20年ほど前は、景気も良く古い住宅が受け入れられない時代だった。最近では、古民家という言葉も身近になり、リノベーション住宅や古民家カフェなども増え、それを好む人も多い。
「時代が変わり、昭和の頃のデザインが受け入れられる時代がやっと到来して、嬉しい。まだ全体からすると少ないが、少しずつそういう人を増やしたい。」
古いものを大切にする暮らしが少しずつ日常に取り入れられるよう、取り組んでいる。
家を一軒壊して新しい家を建てれば、廃材はごみとなり新しい資材も必要になる。古い建物を利用すれば、廃材や新しい資材は少量に抑えられ、また何十年と住める家によみがえる。
「そういう活動を小さな不動産業者でも、各会社それぞれがやっていけば大きな力になる。それを生み出すのは、僕らの役目だと思っている。」
最終的には環境問題にも繋がるこの取り組みは、世界でも目標としているSDGs貢献にもなっている。
明生興産のホームページは、充実した内容で読み応えがあって面白い。リノベーション事例やお客様の声など写真やイラストも豊富で、見ていて飽きない。
そのホームページを担当しているのは、社員の桃田佳依さん。より多くの人に興味を持ってもらえるよう写真を並べるだけでなく文章もおりまぜ、どうしたら自社の思いが伝わるか工夫して発信している。
「ホームページ、SNSを見て『明生さんのリノベーションが良くて来ました』と実際に来てくださると嬉しい。」
日頃、投稿を見てくださっている方に直接会う機会は少ないので、実際に感想を聞いたり話をする時間は楽しくやりがいを感じる。その感想も活かして日々の広報に取り組んでいる。
明生興産は、すみよかプロジェクト認定事業者として若い世代が住みやすい住宅を長崎市と共に協力し供給している。
その一つ「大正古民家」は、長崎市内では残っていることが珍しい大正時代に建てられた築96年の住宅。
当ホームページでも紹介している住宅で、もともと持ち主の方が手を加えながら大切に暮らしてきた住宅を明生興産が引き継ぐ形でリノベーションし、現在は賃貸住宅となっている。
昔の柱や梁、建具などはそのまま残され、釜戸のすすで磨かれた柱などの艶が趣を感じる。水回りや間取りは現代でも使いやすいように変えられていて、若い人でも住みやすい内装になっている。
「南町ヴィレッジ」は、明生興産が考えた「贈与型賃貸住宅」として貸し出している住宅で、10年賃貸として住むとその後は、そのまま賃貸として住み続けるか、贈与という形で土地と家を譲り受けるかを選択できる。
子育て世代の大学進学の時期を見越した10年後、家計の負担を軽減するために考えられたシステムだ。子育て世代だけでなく、手軽に持ち家がほしいと思っている人にも活用できる住宅となっている。この住宅は坂の中腹にあり、坂の多い長崎市内の斜面地の活性化も意識したものだ。
明生興産ではリノベーション住宅が完成するとお披露目会を開いている。
単に完成した住宅を見てもらうだけの場ではなく、飲食店や雑貨販売の方に出展してもらうマルシェイベントのように楽しいものだ。
物件を見てもらうことが前提だが、幅広い客層の人がたくさん訪れ、交流の場にもなっている。出展者同士、出展者のお客さん同士など、人の輪がどんどん広がっていっている。
その中で、古い建物を身近に感じてもらい、興味や意識を高めてもらっている。古いものに触れる機会が少ない若い世代にも気軽に来てもらい、若いうちから古いものに触れてほしいという思いもある。
リノベーションの魅力は、建物の特徴を活かしながら自由にアレンジでき、世界に一つだけの個性ある住宅にできるということ。尾上社長はそれが楽しくてリノベーションを続けている。
また昭和の建物の中には、デザイン性の高いものが残っていることもあり、そんな建物に出会うとわくわくする。今のデザインとは別の美しさがあり、当時それを手がけた人の感性や技術が感じられる。
「昔の棟梁が作った建物がまた50年使われていくっていうのが僕は大好き。」
昔の人の思いや技術を大切に引き継ぎ、新しい生活がそこに生まれていくのを見届ける楽しみがある。
明生興産はレンタルスペース「wabi」「呂色の梁」の運営もしている。
古民家レンタルスペースで、長崎孔子廟、中国歴代博物館が目の前にある異国情緒を感じられる長崎らしい場所に位置する。長屋の住宅として使われていた建物を明生興産がリノベーションした施設だ。
当初テナント用に考えていた施設だが、お披露目会を行ったところ反響が良く、より多くの人が集えるレンタルスペースとして運営を始めた。
人気の施設となっていて、様々な分野のオーナーさんが日替わりでワークショップや展示、物販の販売などを行っている。
桃田さんはこのレンタルスペースも担当し、オーナーさんやイベントのサポートも行っている。
「皆さんとりあえずやってみよう、チャレンジしてみようという精神をもっている。そういうのを見ると、好きな事って足踏みせずに思いっきりやってみた方がいいんだなと感じる。
」
毎日様々な人と触れ合い、桃田さんもオーナーさんやお客さんから刺激をもらって視野も広がっている。
この場所を訪れた人が催しを楽しみ、リノベーションや古民家に触れてもらう。古いものの心地よさ、温かさを感じて好きになってもらうきっかけにもなっている。
古い建物を大切に、その価値や心地良さを一人でも多くの人に知ってほしい。
リノベーションに力を入れ、古い建物を通して人が出会える場を作り、そこに集まる人も古い建物の魅力を知っていく。良い循環ができ、少しずつ長崎の街でも古民家に対する意識が高まっている。
「若い人が増えてほしい。若い世代の力は無限大なので、僕らの世代はそれを後ろから支え、見守る。そんな努力をしていくのが僕ら世代の仕事。」
尾上社長の思いは、しっかりと形となり多くの人に広がっている。
若い人が増え、古いものを大切にした生活、人と出会える仕組みが少しずつ根付き長崎の街が更に魅力的な街になっていく。
プロフィール
尾上 雅彦 社長
有限会社明生興産CEO。不動産事業に加えて、5年ほど前からリノベーション事業にも取り組み、古い住宅をリノベーションし、再販することに力を入れている。古民家の魅力を広めると同時に、環境問題の改善、長崎市の空き家の問題にも貢献。すみよかプロジェクト認定事業「空き家の若者向けリノベーションによる供給」として長崎市と協力し、若者への住宅供給に携わっている。リノベーションレンタルスペース「wabi」「呂色の梁」の運営や古民家リノベーションお披露目イベントなどで出会いの場を作り、リノベーションを通して長崎の人の輪を広げている。
桃田 佳依 さん
有限会社明生興産staff。入社5年。賃貸、ホームページやSNS等の広報を担当し、会社の思いや情報を発信しながら、お客様の対応をしている。イベントスペース「wabi」「呂色の梁」も担当し、イベントのサポート、イベントの情報を発信している。